資産を次世代へ。税務署に否認されない「生前贈与」の証拠の残し方

基礎知識

2026.02.12

資産を次世代へ。税務署に否認されない「生前贈与」の証拠の残し方

1. はじめに:良かれと思った贈与が「無効」になる?

「子供や孫のために、少しずつ財産を分けてあげたい」 「将来の相続税が心配だから、今のうちに現金を移しておこう」

経営者の方々と将来のお話をしていると、よく「生前贈与」が話題にあがります。 年間110万円までなら税金がかからない(暦年贈与)というのは有名な話ですので、すでに取り組まれている方も多いかもしれません。

しかし、ここで一つ、知っておいていただきたいリスクがあります。 あなたが良かれと思って何年も積み立ててきたその贈与、将来、税務署に「これは贈与として認めません」と否認される可能性があることをご存知でしょうか?

もし否認されれば、過去にさかのぼって高額な相続税がかかることになります。 「こんなはずじゃなかった」と後悔しないために、税務署に認められる正しい「証拠の残し方」について、プロの視点からわかりやすく解説します。

2. そもそも、なぜ税務署にバレる?「名義預金」の罠

税務署が贈与を否認する最大の理由。それは「名義預金」とみなされるケースです。

2.1. 「あげたつもり」になっているのは親だけ?

よくある失敗例を見てみましょう。 親が、子供名義の銀行口座を作り、そこに毎年100万円ずつ振り込んでいたとします。通帳も印鑑も親が大切に保管しており、子供はその口座の存在すら知りません。

親御さんは「贈与しているつもり」ですが、税務署はこう判断します。 「これは子供の名前を使っただけの、実質的には親の預金(名義預金)ですね」

贈与とは、あげる側の「あげます」という意思と、もらう側の「もらいます」という意思の合意があって初めて成立する契約です。 相手が知らない、あるいは相手が自由に使えないお金は、贈与とは認められないのです。

3. 税務署に認めさせる!鉄壁の「証拠」の残し方 3ステップ

では、どうすれば「名義預金」と疑われず、正当な贈与として認められるのでしょうか? 税務署に対して「いつ、誰に、確実に贈与した」という客観的な事実を示すための、3つのステップをご紹介します。

STEP 1:毎回「贈与契約書」を作成する

面倒に感じるかもしれませんが、これが最強の証拠です。 「いつ」「誰から誰へ」「いくら」贈与するのかを記した契約書を作成し、お互いに署名・押印をして保管します。 たとえ親子間であっても、毎回作成することをおすすめします。「なあなあ」にしないことが、将来のあなたを守ります。

STEP 2:現金の「手渡し」は避けて「銀行振込」にする

現金手渡しは、証拠が残りません。「確かに渡した」「いや受け取っていない」というトラブルの元にもなります。 たとえ家族間でも、銀行振込を行い、通帳に「記録(足跡)」を残してください。これにより、資金の移動が客観的に証明できます。

STEP 3:通帳と印鑑は「もらう人」が管理する

これが最も重要です。 贈与されたお金が入った通帳や印鑑は、必ず受贈者(もらった人)自身に管理させてください。 「子供が使い込んでしまうのが心配」という親心はわかりますが、親が管理している時点で「親の支配下にある財産=名義預金」とみなされるリスクが跳ね上がります。 どうしても心配な場合は、生命保険の活用や、教育資金贈与などの使途が限定される制度の利用を検討しましょう。

4. 【要注意】2024年からの新ルールをご存知ですか?

これから生前贈与を始める方、あるいは継続中の方に、どうしてもお伝えしたい重要な法改正があります。 令和5年度の税制改正により、2024年(令和6年)1月1日から贈与のルールが大きく変わっています。

4.1. 亡くなる前「7年間」の贈与は相続財産に戻される

これまで、亡くなる前3年間に行われた贈与は「なかったこと」にされ、相続財産に足し戻して計算されていました(生前贈与加算)。 これが改正により、「亡くなる前7年間」へと期間が延長されました。

生前贈与 持ち戻し期間の比較

改正前
過去3年間
相続発生
※亡くなる前3年間の贈与は相続財産に加算
改正後
(2024年以降)
過去7年間
相続発生
※期間が段階的に7年間へ延長(節税効果が出るまで時間が掛かる)

つまり、亡くなる直前に慌てて駆け込み贈与をしても、節税効果は薄くなってしまったのです。 このことからも、「できるだけ早く、若いうちから計画的に贈与を始める」ことの重要性が高まっています。

4.2. 「相続時精算課税制度」の使い勝手が向上

一方で、良いニュースもあります。 これまで使いにくいと言われていた「相続時精算課税制度」に、新たに年110万円の基礎控除が創設されました。 これにより、暦年贈与(従来のやり方)とどちらが有利か、選択肢が広がりました。

従来の仕組み
今年の贈与
翌年の贈与
全額を記録し、将来の相続時に
すべて合算して課税

※少額でもすべて申告が必要で手間が掛かる

改正後(新ルール)
今年の贈与
▲ 110万円控除(申告不要)
翌年の贈与
▲ 110万円控除(申告不要)
110万円を超えた分だけ
将来の相続時に合算

※年110万円以下なら申告不要・相続時加算なし!

少し複雑な話になりますので、「うちの場合はどっちが得?」と迷われたら、ぜひ私たち税理士にご相談ください。シミュレーションを行います。

5. よくある誤解とQ&A

現場でよくいただく質問をまとめました。

Q. 毎年110万円ピッタリだと怪しまれると聞きましたが? 

A. 「毎年110万円贈与する」という約束(連年贈与)だとみなされるリスクはゼロではありませんが、都度契約書を作成し、年によって金額や時期を変えるなどの工夫をすれば、過度に心配する必要はありません。

Q. 贈与税申告をしなくても、税務署には把握されますか? 

A. 110万円以下の場合は申告不要ですが、それを超える場合は必ず申告してください。税務署は大きなお金の動き(不動産の購入など)を把握しており、そこから過去の無申告贈与が発覚するケースが多々あります。

6. 最後に:資産承継は「時間」を味方につける戦略です

生前贈与は、相続税対策として非常に有効ですが、一朝一夕でできるものではありません。 10年、20年という長い時間をかけて、少しずつ資産を移転していく地道な作業です。

しかし、その地道な作業こそが、将来の相続税負担を数百万円、数千万円単位で減らし、大切なご家族の手元により多くの資産を残すことにつながります。

「契約書の書き方がわからない」 「うちの資産規模だと、どの方法がベストなのか知りたい」

そんな時は、大田区の税理士事務所である私たちにお声がけください。 税務署に否認されない確実な証拠作りと、ご家族の想いをつなぐ資産承継プランを、一緒に考えていきましょう。

※本記事は2026年1月時点の法令(令和5年度税制改正等を反映)に基づき作成しています。個別の事情により判断が異なる場合がありますので、具体的な実行の際は専門家にご相談ください。

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